ジャンルは約束ごとの束
ジャンル名は音に貼られた名札であり、作り手と聴き手が共有する慣習の束でもあります。どんなリズムを使うか、どの楽器が中心か、曲がどんな形式で組まれるか、何を歌いどんな姿勢で舞台に立つかがまとまって、ひとつのジャンルと呼ばれます。だからジャンルを知るとは名前のリストを覚えることではなく、その慣習が耳で聞こえるようになることです。ただし境界はいつもあいまいで、多くの曲が複数のジャンルを混ぜています。ジャンル名は正解というより、地図を読むときの凡例くらいに考えると気が楽です。
ジャンルとは、リズム、楽器、曲の形式、姿勢がひとまとまりになった約束ごとです。ブルースから電子音楽、クラシックまで、主なジャンルの決まりごとと耳で聞き分けるこつをまとめました。
ジャンル名は音に貼られた名札であり、作り手と聴き手が共有する慣習の束でもあります。どんなリズムを使うか、どの楽器が中心か、曲がどんな形式で組まれるか、何を歌いどんな姿勢で舞台に立つかがまとまって、ひとつのジャンルと呼ばれます。だからジャンルを知るとは名前のリストを覚えることではなく、その慣習が耳で聞こえるようになることです。ただし境界はいつもあいまいで、多くの曲が複数のジャンルを混ぜています。ジャンル名は正解というより、地図を読むときの凡例くらいに考えると気が楽です。
ジャンルを一番早く教えてくれる手がかりは、拍のどこに力がかかるかです。足で拍を数えながら聴くと、違いがよくわかります。以下は代表的な例で、同じジャンルの中にも例外はいくらでもあります。
ブルースは19世紀末から20世紀初めにかけて、アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人のコミュニティで育った音楽です。12小節をひとまとまりに3つのコードが決まった順番で回る12小節形式、音を少し低めに曲げて歌うブルーノート、歌と楽器が呼びかけ合うコール・アンド・レスポンスが代表的な決まりごとです。これらの要素はその後、ロックやR&B、ジャズのあちこちに染み込みました。ジャズは20世紀初めにニューオーリンズを中心に発展し、即興演奏がその核です。よくあるのは、テーマの旋律を全員で演奏したあと、奏者が順番に即興ソロをとり、またテーマに戻る構成で、7度の音を加えた和音のような色彩豊かなコードがよく出てきます。同じ曲でも演奏するたびに変わるのがジャズを聴く楽しみです。
ロックは1950年代アメリカのロックンロールから出発し、エレキギター、ベース、ドラムを中心としたバンド音楽として定着しました。先ほどのバックビート、繰り返されるギターリフ、ヴァースとコーラスが交互に来る構成が基本の枠組みです。ギターの音をわざとひずませるディストーションは、ロックを象徴する音色です。メタルはこの方向をさらに押し進め、強いディストーション、ルート音と5度だけを重ねたパワーコード、バスドラムを両足で速く連打する奏法などを好んで使います。荒々しく聞こえますが、正確な演奏と複雑な曲構成を重んじる流れも多く、演奏技術に耳を傾けて楽しむファンも少なくありません。
ヒップホップは1970年代、ニューヨークのブロンクスのパーティー文化から始まりました。DJがレコードの演奏だけの部分を繰り返しつなげていたやり方がビートの出発点となり、その上でラップが発展しました。だから他の音源の一部を取り出して新しい文脈に置くサンプリングが重要な手法で、ラップでは歌詞の内容と同じくらい、拍の上に言葉を乗せるリズム感と韻、つまりフローが評価の中心になります。R&Bはリズム・アンド・ブルースから来た名前で、ゴスペルやソウルの影響を受け、ひとつの音節を何音にも転がして歌う節回しと、厚いハーモニーのコーラスが目立ちます。今では二つのジャンルは互いのビートや歌い方を自然にやり取りしています。
電子音楽は、シンセサイザー、ドラムマシン、コンピューターで作った音が中心の幅広いジャンルです。1980年代のシカゴのハウスとデトロイトのテクノが、踊るための電子音楽の重要な出発点としてよく挙げられます。ダンス系はたいてい速さとリズムパターンでサブジャンルを分けるので、似て聞こえる曲でもテンポや低音の動きによって別の名前が付きます。緊張を少しずつ高めるビルドアップと、積み上げた音を一気に解き放つドロップという構造も特徴です。DJが曲をつないでかけることを前提に作られ、曲の前後にリズムだけの部分を長く置くことが多いので、1曲単体よりつながった流れで聴くほうが意図がよく伝わることもあります。
一般にクラシックと呼ばれる西洋の芸術音楽は、時代によって性格がかなり違います。おおむね17世紀から18世紀半ばまでのバロックは複数の旋律が同時に絡み合う書き方と一定の拍動が、18世紀後半の古典派は均整のとれた形式と明快な旋律が、19世紀のロマン派は大きくなった編成と広い感情の振れ幅が際立ちます。交響曲やソナタのように複数の楽章からなる曲は、楽章ごとに速さや雰囲気が変わるように設計されているので、ひとつの楽章だけでなく全体を通して聴くと構造が見えてきます。同じ曲を何人もの演奏者の録音で聴き比べるのも、クラシックならではの楽しみです。
なじみのないジャンルは、最初はどれも同じように聞こえるものです。慣習が耳になじむまで少し時間をかければ、同じジャンルの中の違いが聞こえはじめ、好きな曲も新しく聞こえてきます。
ボタンを押すと、そのエンジンでこのキーワードを検索します